2012/02/22

上司に意見を伝える (2)

前回は、上司に意見を伝えるためには、「アサーティブ」になることが
重要であることをお伝えしました。

今回は、アサーティブな対応をするための4つのポイントを
具体例を交えながらご紹介していきます。

なお、事例はなるべく多くの方がイメージしやすいように、
相手を上司と特定せず、一般的な例を用いています。

みなさんの職場の状況に合わせて、適宜置き換えて読んでみてください。


【アサーティブ4つのポイント】

1.自分の気持ち、考えを正確にとらえる

2.周囲の状況や相手を観察する

3.要求や希望を明確に表現する

4.選択肢を用意する


1.自分の気持ち、考えを正確にとらえる

アサーティブな対応をするためには、自分がどんなことを考え、
どんな感情を抱き、相手に何を伝えたいのかを明確にしなくてはなりません。

当たり前にも思えますが、自分の言いたいことを明確にするというのは
なかなか難しいものです。

非主張的に相手に合わせることを続けていると、自分の考えより
周囲がどう反応するかに意識を取られやすくなります。

また攻撃的な気持ちで相手と関わっていると、いかに自分が優位に立つか
ということに意識を取られやすくなります。

そうしたことを続けるうちに自分の本当の気持ち、考えがわからなくなり、
相手にも伝えられない、という状況が起こってしまうのです。


2.周囲の状況や相手を観察する

アサーティブな言い方は、自分の伝えたいことを相手にきちんと
伝わるように表現します。

そのためには、状況を観察し、相手にもわかる事実を具体的にする
必要があります。

例えば、あなたが職場で大事な電話を掛けようとしている時に、
隣の席のAさんが大声で話しているのに対し

(Aさん、うるさいなあ。)

と思ったとします。

ここで、何をうるさいと感じたかを観察して具体化すると、

「Aさんがうるさい」のではなく
「大事な電話の横で発せられる大声」が自分にはうるさく聞こえる、

ということがわかります。

そして、非難したい気持ちを一旦脇に置いて考えてみると、

(Aさんは自分が今から大事な電話をするところだとは知らない)

(大声になっていることに気づいていないかもしれない)

(大声になっているのには何か事情があるのかもしれない)

などということも見えてきます。

こうした前提が、相手にわかりやすく伝える基盤となります。


3.要求や希望を明確に表現する

観察による共通基盤ができて、自分の気持ちや考えが確認できたら、
それを踏まえた相手への具体的な提案、要望をします。

前述した電話の例で考えると、

・自分が「うるさい」と感じたこと

・それは「大事な電話の横で発せられる大声」に対して感じたものであること

という前提が整理されています。

すると、
「これから大事な電話をするので、少し声を落としてもらえないでしょうか。」
という提案が出てくるかもしれません。

ただ「うるさいんですけど・・」と伝えたり、黙って睨みつけたりするよりも、
相手へ伝わりやすく、自分が欲していることの実現可能性も高まります。


4.選択肢を用意する

相手への提案や要望は1つしかないということはありません。

また、相手も少なくとも「イエス」「ノー」の2通りの返事を持っています。

そうであれば、自分の提案にもいくつかの選択肢を用意する必要があります。

「これから大事な電話をするので、少し声を落としてもらえないでしょうか。」
という提案に対し、
「いや、こちらも今、大事な議論をしているんだ。」
と言って、断られることもあるでしょう。

そこで、
自分が移動して別の場所で電話をする、という選択肢や
「短時間で済ませるようにしますので、その間だけお願いできませんか。」
という妥協案を提示することも考えられます。

このように、相手への反応に幅を持たせておくことで、アサーティブに振る舞う
心理的な余裕も生まれ、さらにアサーティブな関係を築きやすくなるのです。


以上4つのポイントを見てきましたが、アサーティブな対応とは、
自分の考えを率直に、その場にふさわしい方法で表現することであって、
たとえ意見が異なっていてもそこから妥協案を探っていく態度です。

人は自分の価値基準に沿って考えや感情を持ちます。

その価値基準は、経験や年齢や性別などによって様々であり、
上司との間で「考え方や感じ方が違う」ということが起きるのも
当然のことです。

そのような違いを認めた上で仕事上の成果を上げていくためには、
アサーティブな関わりというのは非常に重要ではないでしょうか。


【参考文献】
※『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』平木典子著(金子書房)